2018年にリリースされたMonaLisa Twins play Beatles & more Vol. 2"の特集にしたいと思います。全13曲のリストは以下の通りです。
1.I'll Follow The Sun
2.Bus Stop
3.Please Please Me
4.I Saw Her Standing There
5.Two Of Us
6.Daydream
7.Maxwell's Silver Hammer
8.Paint It Black
9.When I'm Sixty-Four
10.Wake Up Little Susie
11.These Boots Are Made For Walkin'
12.Baby Mine
13.I'll Be Back
1曲目はビートルズの"I'll Follow The Sun"です。1964年にリリースされた4枚目のアルバムである"Beatles for Sale"のA面5曲目に収録された曲です。作詞・作曲はポール・マッカートニーですが、かなり初期の頃の作品で、ビートルズ結成以前に書かれた曲でした。ポールはその頃はあまり出来の良い曲とは思っていなかったらしく、1964年まで発表しなかったそうです。「明日雨が降るかもしれないから僕は太陽を追いかける……」というフレーズがありますが、ジョンはこれはおかしな歌詞だと言っています。
2曲目はホリーズが1966年に発表したシングル曲のカバーです。作詞・作曲は後に10ccのメンバーとなるグレアム・グールドマンが16歳の時に書いたものでした。彼の父は劇作家であり、息子から聞いたバス停での話しから冒頭の歌詞である"Bus stop, wet day, she's there, I say Please share my umbrella"と言う部分を作り、その後を息子が完成させたと言われていますが、16歳にしては意味深長な内容となっていることに感心させられます。曲調もどこかアンダーな感じなところが妙に耳に残る曲だと思います。ホリーズでのメイン・ボーカルはアラン・クラーク、高音パートはグラハム・ナッシュでした。MonaLisa TwinsのPVではMonaとLisaが自分たちがやりたいように演奏・演技していますが、顔がそっくりなので改めて双子なんだなぁと思いました。
3曲目はビートルズの"Please Please Me"です。1963年1月にビートルズが発売した2枚目オリジナル・シングル曲で、1枚目は1962年発売の"Love Me Do"でした。"Please Please Me"の作詞・作曲名義はレノン=マッカートニーとなっていますが、実質的にはジョン・レノンが書いたものです。リードヴォーカルもジョンで、ポールとジョージがコーラスを担当しています。またハーモニカの演奏もジョンです。MonaLisa Twinsのミュージック・ビデオではMonaがハーモニカとリードヴォーカルですが、若い女の子がこの曲を演奏してくれているととても嬉しくなってしまいますね。
4曲目もビートルズの"I Saw Her Standing There"です。1963年に発売されたビートルズ初のイギリス盤公式オリジナル・アルバム"Please Please Me"に収録されたA面1曲目になっています。CDしか見たことのない世代の方にはA面・B面といっても分からないと思いますが、アナログレコードには円盤の両面に極細の溝が渦巻き状に刻まれていて、その溝にレコード針というものを置き、溝に刻まれた振幅を読み取り、電気的に増幅して音楽を再生していたのです。その溝に誤って傷をつけたりすると、修復不可能となり雑音が入ったり、針が飛んでしまったりするので、レコード盤はとても慎重に丁寧に扱っていました。静電気を帯びることもあるので専用のスプレーやほこり取りベルベット製のクリーナーで手入れをしたりしていました。ビートルズの原曲ではポールがリードボーカルを歌っていますが、TwinsのライブではLisaがリードボーカルと間奏のギターのフレーズを弾いています。
5曲目の"Two of Us"は1970年に発表されたビートルズのラスト・アルバム『レット・イット・ビー』に収録されている楽曲です。この曲もA面1曲目で、軽快なアコースティックギターのイントロから始まります。実質的な作者はポールと言われていますが、メイン部分はジョンとポールのコーラスで構成されています。MonaLisa Twinsのビデオでは曲の演奏シーンは無く、MonaとLisaがまだ赤ちゃんの頃から大人になるまでの記録ビデオのような構成になっています。幼い双子の赤ちゃんが何ともかわいらしいこと!
6曲目はラヴィン・スプーンフルの"Daydream"です。Lisaが大好きなウクレレを軽快に弾きながらリードボーカルを歌い、Monaがアコ-スティックギターを弾きながらコーラスを付けます。Lisaの歌唱もとても良いのですが、Monaのコーラスが素晴らしく雰囲気ばっちりです。おそらくYouTubeでこのビデオを見たことからラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャン氏との交流が始まったのだと思います。そりゃあびっくりしますよね、自分の曲をこんなにも素敵に演奏する女の子達がいたのですから。
7曲目は再びビートルズで"Maxwell's Silver Hammer"1969年発売のアルバム"Abbey Road"のA面3曲目に収録されたポール・マッカートニーの作品です。歌詞の内容はマックスウェル・エディスンという医学生がジョウンという変わった女の子を映画に誘っておいて銀の金槌で撲殺するという所からはじまり、授業を妨害したことを咎めた女性教授と、自分の事件の裁判長も撲殺するという、ビートルズとしては非常に珍しい物騒なものとなっています。ポールはこの曲をシングルカットしたかったらしいですが、他のメンバーからは酷評されていたので実現されませんでした。MonaLisa Twinsのビデオでは古いモノクロ映画風で、リードボーカルのMonaは一昔前の女優のようなメークになっています。ピエロ風のメークでマックスウェル役をやっているのは多分パパ・ルディだと思います。お父さんは芸達者ですね。
8曲目はガラッと変わりましてローリング・ストーンズの"Paint It Black"です。1966年にリリースされイギリスの全英シングルチャートとアメリカのBillboard Hot 100の両方でシングルチャートの1位を記録しました。作詞・作曲はミック・ジャガーとキース・リチャーズの共著でした。MonaLisa Twinsのビデオではアコースティックギターを弾きながらボーカルですが、映像はダークの中に右手からの光でハーフシェイドとなったMona & Lisaの姿が印象的です。オーバーダビングでMonaが何かを手で叩いているパーカッションの音と映像がとても効いています。スリリングでカッコイイですね。
9曲目は"When I'm Sixty-Four"で、1967年に発表されたビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のB面3曲目に収録されている曲です。私がはじめてMonaLisa Twinsに出会った曲でした。ちょうど私が64歳になった誕生日の朝に偶然にもYouTubeで見つけてしまいました。あれから2年経ちましたが、MonaLisa Twinsは日本では無名に近い存在です。彼女たちの素晴らしい音楽が少しでも日本のリスナーの耳に届けば……という思いでホームページを立ち上げ、紹介することになった訳です。設置してあるフォームから時折、感想をお寄せいただいて来ましたが、どちらかというと私と同年代の方からのものでした。出来ることなら若い世代の方にこそ聞いてもらいたいと思っています。何故なら1960~70年代のポップスの名曲には時代を超えた普遍的な魅力があると思うからです。Mona & Lisaはその類い希な表現力を持ってそれらの名曲をカヴァーとして原曲を超えるほどの演奏で聞かせてくれています。またオリジナル・アルバムである"When We're Together""ORANGE"に収録されている彼女たちが作詞・作曲したオリジナル曲はすべて非常に高いクオリティーを持ったものですので、ぜひYouTubeのビデオから聞いていただきたいと思います。
10曲目はエヴァリー・ブラザースの"Wake Up Little Susie"です。1957年の作品ですからかなり古い曲です。歌詞の内容は高校生の主人公が、ガールフレンドのスージーに「起きろよスージー」と呼びかけるというもので、ふたりはデートで映画を観ているうちに眠り込んでしまい、門限は午後10時だったのに、午前4時になるまで、ふたりは目覚めなかったので「やばい!」とあわてるというものです。この曲はMonaLisa TwinsのYouTubeビデオではラジオスタジオでの演奏とライブ会場での演奏がありますが、今回はエキサイティングなライブ会場版で。
11曲目はナンシー・シナトラの"These Boots Are Made For Walkin'"です。繰り返し出てくるフレーズ"These boots are made for walking, and that's just what they'll do. One of these days these boots are gonna walk all over you."="このブーツは歩くためにつくられてるの。そんなことわかってるわよ。でも仕方ない、今日はアンタを踏みつけてやる。"というかなりサディスティックな内容になっています。リバプール、キャバーンクラブでのライブから。
12曲目の"Baby Mine"は1941年公開のディズニーアニメーション映画『ダンボ』で使われた曲でした。作詞はNed Washington、作曲はFrank Churchillによるもので、最初の映画のサウンドトラックはベティ・ノイズが歌いましたが、その後多くの歌手によってカヴァーさています。そして2019年3月公開の「ダンボ」はティム・バートン監督が実写化したもので、カナダのロックバンド、アーケイド・ファイアによる"Baby Mine"は映画のエンド・ロールで使用されています。メロディーラインがとても美しく、やさしい母の愛情を感じさせるものですね。1988年に公開されたベッド・ミドラー版、新しいアーケイド・ファイア版、そしてMonaLisa Twins版と3曲続けてお聴き下さい。
最期の13曲目は"I'll Be Back"です。1964年にリリースされたビートルズ3作目のオリジナルアルバムである"A Hard Day's Night"(邦題は『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』でした。)に収録されたB面最期の曲です。リードヴォーカルはジョンで、ポールとジョージがバックコーラスを担当しています。アーノルド・シュワルツェネッガーが『ターミネーター』でのきめぜりふ"I'll Be Back"とは全く関係ないと思います。
postscript(P.S.)追伸ですが、MonaLisa Twinsの最新ミュージックビデオが公開されていますのでご紹介します。"Once Upon A Time"は2017年にリリースされたオリジナルアルバム"ORANGE"の3曲目に収録された曲です。"Once Upon A Time"とは直訳すれば「あるとき」ですが、日本語の「むかしむかし、あるところに……」ではじまる物語の決まり文句と同じようなものです。MonaとLisaもなにやら古代風の衣装を身につけ壮大な風景の中で歌っています。そしてこの曲ではハーモニカ奏者でもあるジョン・セバスチャン氏をフューチャーしてのコラボレーションとなっています。